日欧EPA発効 暮らしにどう影響                    県内関係者の反応

2019年2月1日ニュース
日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が2月1日に発効し、欧州産の食料品や服飾品など幅広い品目の関税が撤廃や削減された。ワインや日本酒などの関税は即時撤廃。大手スーパーは既に欧州産ワインを値下げし、消費者にアピールする。日本酒の輸出拡大を目指す新潟県内の酒造メーカーには歓迎ムードが漂う。一方、豚肉やチーズなど欧州産食品の値下がりも見込まれるため、畜産業界からは影響を懸念する声が上がっている。

【販売】ワイン需要、追い風期待

 イオンは日欧EPAを輸入ワインの販売拡大に生かそうと、発効前の1月から欧州産25種を値下げした。2月1日にはさらに300種を平均1割程度値下げする。新潟市江南区のイオン新潟南店の小川桃子・リカーマネージャーは「ワイン需要が高まる中、EPAは追い風」と期待する。

 ワインの関税はこれまで、価格の15%分か1リットル125円の安い方が適用されていた。同区の会社員男性(38)は「毎日晩酌にビール2本を飲んでいるが、ワインが500円以下になるなら切り替えたい」と歓迎した。

 一方、県内のスーパーや卸業者は様子見の状態だ。関税撤廃前に仕入れた商品があるため、ウオロク(新潟市中央区)や酒類卸・販売の片山商事(同東区)は「今のところ値下げの予定はない」とする。原信やナルスを展開するアクシアルリテイリング(長岡市)は「EPAを見据えて若干の値下げをした。今後はメーカーや卸売りの動向次第だ」とする。

 高価格帯での値下げ効果は限定的だ。高級ワインを中心にネット販売を展開する「ヴァンデナジラデ?」(新潟市中央区)の松橋裕子代表は「高価格帯の商品は、関税分の値下げが消費者へのアピールポイントになりにくい」と分析する。

 農産物はブドウにかかる7・8~17%の関税が即ゼロになる。豆類も一定枠に限り10%の関税がなくなる。水産物は、冷凍の大西洋クロマグロやマグロの缶詰、エビなどが即時撤廃の対象だ。サバのように撤廃に複数年かけるものもある。

 服飾品は、織物や衣類が発効と同時に関税ゼロになる。一方、皮革・履物関連は関税撤廃に十数年かける。欧州には高級服飾ブランドが多く、値下がりが期待できる。

 欧州産チーズも徐々に関税を下げる。種類ごとに税率が異なるが、29・8%が課されていたカマンベールやモッツァレラは当初2万トンの輸入枠を設定し、枠内分の関税を16年目になくす。チェダーやゴーダなど「ハード系」と呼ばれるチーズは枠を設けず16年目に撤廃する。

 輸入チーズを中心に扱う新潟市中央区の「J&Yチーズショップ」の土田健輔オーナーは「現段階では仕入価格の変更があるか不透明。輸送費も高く、すぐに売値に影響はしないのではないか。仕入価格が下がれば還元したい」と話した。

【生産】競争激化への懸念も

 日欧EPAの発効に県内事業者は市場拡大への期待をしつつ冷静に受け止める。畜産関係者には競争激化への懸念もある。

 本県が誇る日本酒は、現行で1リットル当たり10円程度の関税が即時撤廃される。ドイツなど欧州向けが輸出量の約6%を占める朝日酒造(長岡市)は「小売価格に与えるインパクトは限定的」とみる。ただ、欧州では日本酒の浸透が進みつつあり「発効を機に現地業者と協力し、小売店への販促に一層力を入れていく」とする。

 逆にワインは輸入時の関税が即時撤廃され、国産にとってはブランド力の高い競争相手が増えることになる。それでも、カーブドッチワイナリーを運営する欧州ぶどう栽培研究所(新潟市西蒲区)は「ポジティブに捉えている」。低価格帯の消費が増えればワインを楽しむ人口が増え、「次のステップとして日本ワインに興味を持ってもらえる」と期待する。

 欧州は日本への豚肉輸出が多く、品質の良さで知られるイベリコ豚などが身近になりそうだ。高価格帯にかかっていた4・3%の関税が10年目にゼロとなり、低価格帯も引き下げとなる。ベーコンやハムなどの加工品も複数年かけて関税を撤廃する。

 このため、生産者には競争激化の懸念がある。県養豚協会によると、昨年は環太平洋連携協定(TPP)参加国でもあるカナダ産の輸入が増加。自給率は低下し、相場も低迷したという。協会の相馬政春会長は「欧州ではスペインが輸出を伸ばしており、状況がさらに厳しくなると不安感がある。国などには現場の声をよく聞き、生産者支援の対策をとってもらいたい」と話している。


【社会】 2019/02/01 12:15 新潟日報モア